白川退任前講演より、最後の一行が本音だろ。

ttps://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko121112a.htm/

ところで、こうしたマネー指標に即した議論とは別に、やや感覚的な表現ではありますが、日本銀行はもっとどんどん「お金」を刷るべきだ、というご意見も少なくありません。
ただで「お金」をもらえるという、うまい話が実際にあるのならば、それは誰でも歓迎しますが、そんな話はもちろんありません。

日常会話で「お金」というと、現預金、すなわち、手元流動性のことを指すことも多いですが、所得や財産の意味で使うことも多いように思います。
実際、「お金持ち」とは多額の所得や財産を持つ人のことです。しかし、日本銀行が供給する「お金」はそれとは違います。
日本銀行の資金供給が、しばしば比喩的に「お金を刷る」と言われるために、誤解が生じてしまうのですが、
日本銀行の資金供給とは、例えば日本銀行が金融機関から国債を買い取り、その購入代金を、当該金融機関が有する日本銀行の当座預金口座に振り込むことです。
すなわち、金融緩和とは、「ただでお金をばらまく」ことではなく、国債などの資産を買い取ったり、国債を担保に貸し付ける等価交換であり、その段階では所得や財産という意味での「お金」は増えません。

増えるのは日本銀行の当座預金という意味での「お金」です。
こうした中央銀行の行動によって金利が低下し、これが企業の資金需要を喚起し、投資などの様々な経済活動が活発になっていくことを通じて、
所得や財産という意味での「お金」がようやく増えることになります。

ありうる反論として、ヘリコプター・マネー、すなわち天からお金をばらまけば、景気が良くなり物価は上がるはずだ、という議論があります3。
これも一種の比喩です。
最近、英国で中央銀行の保有する国債について償却を行ってはどうかという議論が行われ話題になりましたが、これは正にヘリコプター・マネーの議論の本質を表しています。
仮にそうしたことが行われると、中央銀行は損失を計上し、政府への納付金が減少するか、政府から資本不足分の補填を受ける必要が生じます。
いずれにせよ、税金の裏付けが必要であり、これは政府や議会が決定する財政政策です。

色々申し上げましたが、現在のようなゼロ金利環境ではマネーの保有にはコストがかからないので、いくら供給してもスポンジが水を吸うように吸収されてしまいます。
マネーの総量は重要であり、日本銀行による今の資産買入れを前提とすると今後もマネタリーベースは大幅に増加していきますが、
現在、それ以上に重要なことは、成長力の強化を通じて、マネーの回転速度を引き上げることです。